清楚で可憐なサギソウの群生に酔いしれる。『貴重な生き物の宝庫 皿池湿原めぐり』体験記
サギソウ・・・。
サギソウは、日本各地の日当たりのよい低地の湿地に生える球根性のラン。その花の形は翼を広げた白鷺(シラサギ)を思わせます。日当たりのよい「貧栄養な湿地」(←ここポイント!)で生育する多年草です。かつては身近な湿地に比較的よく見られた湿地の代表的な植物でしたが、湿地の遷移や開発による造成、園芸目的の採集圧で激減しました。今や兵庫県版レッドデータブック2010のBランクに位置する全国的に希少な植物です。


今回は、令和元年8月24日に開催された武庫川流域環境保全協議会エコバスツアー『貴重な生き物の宝庫 皿池湿原めぐり』のレポートをお届けします。
参加者の皆さんは神戸の三ノ宮からバスに乗って三田を目指しますが、私、fumitaroは三田市民。これ幸いと自転車で兵庫県立人と自然の博物館、(通称ひとはく)に乗り付けました。今日はめずらしく快晴です!
参加者の皆さんは神戸の三ノ宮からバスに乗って三田を目指しますが、私、fumitaroは三田市民。これ幸いと自転車で兵庫県立人と自然の博物館、(通称ひとはく)に乗り付けました。今日はめずらしく快晴です!
今回のエコバスツアーのメインスポットは、三田市の第二テクノパークの奥辺りにある皿池湿原ですが、まずが、現地に入る前に皿池湿原についての事前学習会。ひとはくの石田弘明先生から皿池湿原について学びます。今回のエコツアーの参加者は最年少は5歳から最年長は87歳。「知りたい!」という関心に向け方に年齢は関係ありませんね。


皿池湿原のような湧水湿地の成り立ちの解説図です。図のような地勢的条件が重なって湿地というのは出来上がるのですね。
皿池湿原の地図ですが、等高線がどうなっているか分かりますか?
湿地やため池のある中央部は、谷のようになっていて、末広がりの形でゆるやかに下って開けたところに下相野皿池があります。つまり、谷間を挟む標高の少し高いところから、水が砂礫層の地面を伝って谷間に沁み出てくるところに A・C・D・B の湿原があります。
背の低い草が広がる湿潤な地面が湿原です。ひとつひとつの湿原は小さなものですが、こうした湿原でないと生きられない貴重な生き物たちの楽園になっています。
皿池湿原は三田市の大型工業団地である第二テクノパークの用地として消えて無くなってしまう危険性もありました。しかし、上記のように皿池湿原には兵庫県版の絶滅危惧種が多く生息する土地であることを関係機関や民間団体が主張することで保全されることになったそうです。
皿池湿原にはこんな植物や・・・
こんな水生昆虫までいるそうです。他の場所では滅多にお目にはかかれない貴重な生き物たち。
そして、トキソウやサギソウも。サギソウの花は丁度、今の季節が花が咲いて見頃だそうです。
皿池湿原見学の事前学習会が終わり、お昼まで人と自然の博物館の見学時間。ダンゴムシのお腹がどうなっているのか興味深々の男の子。
貴重な蝶の採集コレクションの美しさに感嘆の声をあげる参加者たち。
どどーん。ツキノワグマ。比較的若くて小さな個体だと思いますけど迫力がありますね。
写真では分かり辛いと思いますが、こいつはかなりデカい。さっきのツキノワグマとあんまり大きさが変わらないくらい。山中でこのサイズのイノシシに遭遇すると怖いです。そんなこんなでひとはく見学を楽しんだあと、私は自転車で皿池湿原に向かって走り出します!
第ニテクノパーク管内の広々とした場所に集合して皿池湿原に向かいます。ここからは、緑と白のキャップを被った「皿池湿原の守り人」というボランティア団体の方々もサポートしてくださいます。
よろしくお願いします('ω')ノ
森の中の小道を皿池湿原に向かってゆっくりと歩いていきます。
皿池湿原は普段は環境保全のため、ゲートが閉じられて一般の方の立入りは制限されていますが、今回はエコツアーのために開放されています。とっても貴重な機会ですね。
歩み進めていくとなんだか気になる道標が。。
これはヒメタイコウチ・・・なのか? でも、このような道標があると気分が盛り上がりますね。
森の中に入っていくと不思議な木がありました。見たまんま「Nの木」と呼ばれていましたが、何がどうなってこんな幹の伸び方をしてしまったのか、まったく不思議です。
水っぽいぬかるんだ地面を歩いていると、地面をかさかさと動き回る昆虫がたくさんいました。羽が退化して飛べないらしく、簡単に摘まみ上げて手の上に載せてみると、これは写真で見た希少生物のヒメタイコウチではないですか!!女の子の「何それ~」とばかりに不思議な物を眺める表情が素直でいいですね。
あっ!!これは!!と何人もの人が地面を食い入るように見ている物がありました。「ほらそこに!」「えっどこどこ?」なんて会話が何度も繰り返されていましたが・・。
小さな小さな植物で、兵庫県版レッドデータBランクの菌従属栄養植物のホンゴウソウです。「は?菌従属栄養植物?」「何ですか、それ?」ですよね。全く光合成を行わず、すべての栄養を菌類に依存している植物とのこと。土壌に栄養分が少ない湿地に生える貴重な植物で、見けるのも大変。
いくつかある皿池湿原の中で最も広いA湿原に到着。背の低い植物に覆われて草原状になっていることが湿原の特徴です。ロープの向こうは足元が水でぬかるんでグジュグジュになっています。
森の中を歩いて少し離れた場所にある小さなE湿原に移動しました。そこで皆さんが夢中で目にしているものは??
出た!!ハッチョウトンボ!! 湿原にのみ生息する世界最小級のトンボです。
宝塚の松尾湿原でもたくさん見ましたが、ここでもたくさんのハッチョウトンボの姿を見ることができました。
そして、今回のエコツアーの大トリは、草群の中に点々と見える白い花、サギソウです。これだけたくさん群生していると、どうということのない花に思えますが、とっても貴重な種なんです。
シラサギが翼を広げているような純白で可憐な姿と、湿地にしか生息できない希少性とで魅力ある花です。花言葉は、「夢の中でもあなたを想う」。。なんとまぁ、清楚で儚いロマンティックな花言葉でしょうか。
見る人が見ると、これだけたくさんのサギソウが群生している場所というのはとても貴重だと思います。テクノパークの工場の敷地として消えそうになっていた皿池湿原。一度失われてしまうと、簡単に元には戻らないことがあるということを肝に銘じておかなければいけませんね。
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