
こんにちは。自転車乗りfumitaroです。
自転車乗りfumitaroの北摂探訪記、第3回目は、平成29年11月18日に催された、能勢妙見山ブナ守の会主催「妙見山のブナ林 シンポジウム&観察会」に参加させて頂いた様子をお伝えさせて頂きます。長くなりますがぜひお付き合いください。
冒頭の写真は妙見山山頂付近に広がるブナ林観察会での集合写真です。私、fumitaroは、集合写真の一番奥、アカガシの大木のウロの陰からチラリと顔を覗かせております。
集合写真の撮影は「妙見山のブナ林 シンポジウム&観察会」の最後の一幕なのですが、
ブナやアカガシの大木が林立する妙見山のブナ林は乳白色のガスに包まれて、大木の陰と仄かな光が同居する白と黒の神秘的な世界。ここにいるだけで不思議と大地のエネルギーを自分の中に取り込めるような不思議な感覚がありました。
妙見山のブナ林は約1万年前の氷河期から続く原生林ですが、様々な環境的な要因により、消滅の危機にあるようです。日本全国規模で見ても希少な妙見山のブナ林を保護し、次世代に繋げるための活動に取り組んでいる「能勢妙見山ブナ守の会」の活動の一端に触れることが出来たことは私にとっても得るものが大きな貴重な体験となりました。

当日は生憎の雨。晴れていれば、三田から自転車で一庫ダムを経由して黒川の集落を越えて、ここにやって来る予定でしたが、今日はクルマでの来訪。能勢電鉄妙見口駅近くにある吉川町自治会館で「妙見山のブナ林 シンポジウム&観察会」、午前の部のシンポジウムが開催されます。

シンポジウム会場の受付でレジュメとともに鋭い針のような葉脈が特徴的なブナの葉のしおりを記念品として頂きました。

~北摂の「日本一の里山」に繋がる能勢妙見山のブナ林~というテーマで、ひょうご環境創造協会の栃本大介先生の講義を1時間ほど拝聴しました。樹木や森が好きで図鑑を捲る程度には興味のある私でしたが、原生林のシンボルでもあるブナについて、あるいは妙見山におけるブナ林について色々と学べる良い機会となりました。
折りしも10月の台風21号の襲来で樹齢200年を超える貴重なブナの大木が7本も倒れた直後という事で関係者は落胆の思いでもあったようです。しかし、ブナの大木が倒れた後、ぽっかり空いた空間に光が差し込み、そこに次世代のブナの若木が育つ、という「ギャップダイナミクス」と呼ばれる現象にブナ守の会のメンバーも希望を繋げています。死と再生の連続性を絶やさぬためには、ブナ林を守る人たちの不断の努力が必要不可欠です。

さぁ、午前中の講演も終わってお昼ご飯。能勢電鉄妙見口駅前にやって来ました。こじんまりとした場所ですが、駅前は妙見山への登山客で小さな賑わいを見せていて、ほのぼのとした雰囲気です。奥の赤いお土産屋さんで昼食をとることにしました。

お店で一番のおすすめメニュー「ししなべ味噌煮込みうどん@1500」を頂きました。少し冷え込みがあったので温かいうどんと猪肉でほくほくと暖を取ることが出来て良かったですが、欲を言うともう少し猪肉欲しかった。

食後のデザートに能勢名物、ヤーコンサイダーと草団子。ヤーコンは、アンデス高地原産のキク科の植物の根っこで、雰囲気としては芋に近い野菜。ほのかな甘みがあってシャキシャキとした歯ごたえがするそうです。そのヤーコンで作ったサイダー。爽やかな風味でとっても美味しいです。草団子もモチモチと弾力があって2本も食べて満腹(*’ω’*)

雨が降りやみかけた午後からは、栃本先生と能勢妙見山副住職でブナ守の会の事務局長をされている植田観肇さん(右側の赤いヤッケを着た方)の案内でブナ林の観察に向かいます。道中、「日本一の里山」と呼ばれる吉川の里についても教えて頂きました。

吉川の八幡神社に向かう道すがら、崖の下に阪急電車のヘッド部分を発見。これは阪急電車(能勢電鉄?)ファンの八幡神社の宮司さんがオークションで競り落として神社の敷地に置いてあるのだとか。またこの神社には阪急電車のイラスト入りの御守りもあるとかで、親しみやすい宮司さんなのでしょうねぇ。

古い常緑樹の鎮守の森に包まれた八幡神社の社はなかなか荘厳な佇まいを見せておりました。阪急電車のオブジェが置いてあるような親しみやすい雰囲気とは一線を画しているような。

里山と言えば、薪材のクヌギやコナラといった人の手の入った雑木林に覆われているのですが、神社の境内は人の手が入らないので西日本特有の常緑樹林の古木が見られることが多いです。スダジイやマテバシイなど葉がテカテカと輝いている太い椎の木が何本も見られます。

小さな水滴状の木の実が「シイノミ」のです。外殻を割ると白い実が出てきて、パクっと食べて噛むと、ほのかな甘みとコクがあって実に美味しい。でもお腹いっぱいになるには何粒拾わないといけないんだろう~。

これは隣の黒川地区でも有名な台場クヌギです。炭を作るための木材を得るためにクヌギを幹の途中で伐採し続けると切株から新しい芽が出て、細い幹が伸びてこのような形になるらしい。茶道で重宝する能勢菊炭はこのクヌギから作られています。台場クヌギは森の黒いダイヤと一時謳われたオオクワガタの棲家としても最適らしいですね。

そしていよいよ妙見山へ。黒川駅からケーブルカーに乗って山上へと向かいます。

ケーブルカーの中から登ってきた風景を撮影。斜面の下に駅が見えますが自転車では登れないほどの急勾配です。

ケーブル山上駅からモミジの紅葉が美しいいろは坂を登って、妙見の森リフト乗り場を目指します。

妙見の森リフトには初めて乗りましたが、その名の通り、妙見山の森の風景を楽しみながら約600メートル登って行きます。

そしてついに、ブナの林に到着です。入口の案内看板を前にブナ林についての説明がありました。妙見山のブナ林はほとんどが大阪府域にありますが、わずかな面積が川西市域(兵庫県域)にあり、そこに生える8本のブナの木は川西市の特別天然記念物に指定されています。

ブナの森に入るために雨上がりのぬかるんだ斜面を登って行きます。

ブナの森に入って最初に目にするのはブナの若木を育成するためにフェンスで囲まれた小さな区切りです。妙見山のブナ林も鹿害に遭っているのですけど、ブナ林を将来に繋げていくのに必要な若木を育てる区域だけ鹿除けフェンスで囲ってしまうというパッチディフェンスという考え方に基づいているそうです。
この囲みの中に数本のブナの若木が植わっているのですが、互いに競争し合って大きく成長することが出来る木は限られた本数だけだそうです。

これだけ太いブナの木は初めて見ました。図鑑に載ってあるような特徴的な樹皮の模様そのままです。この樹皮の紋様は菌類や藻類の共生体である地衣類や、濃い緑褐色のコケ植物
が樹皮の表面に生えることで作り出されているようだ。

ブナの森に入っていくと、樹齢100年を超えるようなブナの木やアカガシの大木が混ざり合い、低木の少ない見通しの良い森です。その森にガスが立ち込め、妖しささえ感じる神秘的な雰囲気を醸し出す空間になっています。

ブナの森を歩いて行くと根元の土壌からごっそりと倒れてしまったブナの大木が見えてきました。その迫力に観察会の参加者たちも唖然とした様子。

空に向かって数十メートルもの長さで立つブナの大木が地面に横たわるとこんなに巨大なものになるのかと。壮絶な様子に参加者たちもその場から離れることが出来ませんでした。

吸い込まれるようにブナの森の奥に歩いて行きます。

堂々とした幹の太さの割に小ぶりで可愛らしいブナの落ち葉。綺麗な形が魅力的ですね。

妙見山のブナ林で最も太い(周長が長い)とされるアカガシの大木。堂々した体躯と広く四方に枝を伸ばす姿に惹き込まれます。冒頭の記念写真はこの場所で撮影されたものです。

記念撮影の後、ブナ林の中で現地解散となり、静かに過ぎたブナ林観察の時間をあとにして妙見山を下りました。霧立ち上る秋の夕暮れの風景そのままに、妙見の山襞から立ち昇るガスと里山の美しさに見惚れながら帰路に着きました。
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